介護保険における「利用者負担」と「支給限度額」の問題点

お役に立てたら、シェアしていただけると嬉しいです!

頭を抱える男性

介護保険を使いはじめると、いろいろと耳慣れない言葉を聞くことが多くなって、困ることがあると思います。アセスメント、QOL、ケアプラン、サービス担当者会議、身体拘束、民生委員などなど、さまざまな用語がありますが、使いはじめの方が最初に考えるだろう用語に「利用者負担」と「支給限度額(利用限度額)」があります。

ちなみに各用語に興味のあるかたは、下記の記事をご覧になってみてください。

さすがにそれくらいはわかるよという方もいるでしょうが、その言葉の意味するところを本当にわかっているでしょうか。もちろん、大まかな意味としては言葉のとおりなのですが、この2つ次第で介護保険サービスの質は大きく変わってきます。それぞれについて、知っておきたいことを下記でご紹介していきます。

 

介護保険の利用者負担は 原則1割で、残りは保険料と税金

1ヶ月の介護サービス利用料が1万円だとすると、利用者の自己負担は1割の1,000円となります。残りの9,000円は保険料と税金で半分ずつ支払われ、それぞれ、保険料が45,00円、税金が4,500円です。さらに細かい内訳を見ると、税金のうち2分の1が国(2,250円)、残り4分の1が都道府県(1,125円)と市区町村(1,125円)の負担となります。

このように、介護保険を利用しても利用者が負担するのは1割でいいのです。ただ、上記の内訳を見ればわかるように、介護保険が利用されればされるほど、保険料も税金も多額のお金が必要になります。介護保険制度が始まった時に約1.1%であった保険料率は2014年3月からは1.72%まで上がることが決まっており、さらに2015年度からは所得の高い高齢者は介護保険の利用負担が2割になることも決まりました。今はまだ1割負担ですむ利用者負担や保険料も、今後、少子高齢化が進むにつれて、今より負担が増えることは確実です。

 

利用限度額について

上記で介護保険は1割の負担で利用できると書きましたが、実は要介護度ごとに1割で使える毎月の限度額が決められています。その限度額超えてしまうと、超えたぶんは全額自己負担となるため、気をつけなければなりません。各要介護度の利用限度額は下記のようになっています。

  • 要支援1 → 約50,030円
  • 要支援2 → 約104,730円
  • 要介護1 → 約166,920円
  • 要介護2 → 約196,160円
  • 要介護3 → 約269,310円
  • 要介護4 → 約308,060円
  • 要介護5 → 約360,650円

介護保険の各サービスはそれぞれ1回あたりの金額が決まっていますので、1ヶ月間でどのサービスを受けたら上記の金額内でおさまるかを考えて、ケアマネージャーさんにケアプランを作成してもらいます。例えば、通常規模型通所介護を3時間以上5時間未満利用した場合には、要介護1で400単位(4,000円)、要介護5が628単位(6,280円、介護度ごとに価格が変わります)となっています。

なお、この利用(支給)限度額については、さまざまな問題点も指摘されています。ご興味のある方は、下記の記事をご覧になってみてください。

利用(支給)限度額の問題点とは何か?

介護保険の利用者負担額って実際はどれくらい?

では、利用者負担となる金額はどれくらいなのでしょうか。日本経済新聞の2012年10月31日の記事に答えがあります。記事のタイトルは「5人に1人は要介護、自己負担額は月3万~5万円」、つまり、平均的に毎月3万円以上の負担が発生しているというのです。思いのほか高額で驚かされます。

また、これ以外にも介護にはお金がかかってきます。上記利用限度額をオーバーしたものは全額自己負担となります。さらに、介護保険外の費用もあります。代表的なのは「介護施設の居住費」「食費」、「理美容費」・「洗濯代」・「衣服」・おむつやトイレットペーパー代などで、これらは本人や家族で買い揃える必要があります。そうなると、介護をすることで毎月かかるお金は3~5万円を上回る可能性も十分にあると言えるでしょう。

高齢者介護で必要となる費用については、下記の記事でもまとめています。

費用・料金は入居を決める大事なポイント 

低所得者への負担軽減措置

しかしながら、それだけの額をすべての人が払えるかというと現実的には難しい面があります。そもそも、、介護保険制度が創設される前の措置制度の時代(~1999)は所得に応じて負担額が決められていましたが、介護保険では所得に関係なく原則1割負担ですので、所得の少ない人にとっては負担が大きくなるのではないかという議論がありました。

そういったことを鑑みて、低所得者のための軽減措置が準備されています。一時的に支払いが高額になった場合にも、支払った費用の一部をあとで還付をすれば受けることができます。また、それ以外にも住民税非課税世帯で国民年金を受けている方などは、低所得者を対象にした負担軽減措置が利用できる可能性がありますので、ケアマネジャーさんや役所の担当窓口に問合せてみることをおすすめします。

一定の所得がある高齢者は自己負担2割に

このように、負担が増えないような仕組みがある一方で、冒頭でも述べましたように2015年8月からは介護保険の負担額が増えることになっています。背景には、厳しい保険財政があります。2割負担の方の詳細としては、「年間の合計所得金額160万円以上、年金収入の場合280万円以上」となっています。

医療保険でも、所得状況に応じて1割から3割の自己負担が制度化されていますので、そのあたりの公平性も鑑みた結果が、今回の値上がりだと思われます。財務省はさらなる値上げも検討しており、介護保険制度の持続のためとはいえ、今後議論が過熱することは間違いないでしょう。

これら以外にも、介護保険は実は多くの問題点をしてきされています。それらがどのようなもので、今後どうなっていくかご興味のある方は、下記の記事をご覧になってみてください。

介護保険制度の今後の方向性について

以上が、介護保険の利用者負担と利用限度額についての概要です

 

自費での支払いは金額の高さが問題である

介護保険の支給限度額(利用限度額)は利用者にとって多くの問題があります。今回はその問題点についてご紹介をします。その前に介護保険の基本的なことをおさらいしたい方は下記の記事もぜひご覧ください。

介護保険制度の概要

介護保険制度の歴史

介護保険制度の評価・今後の方向性について

それでは支給限度額の問題点について考えていきます。まず、限度額を超えた「料金の高さ」の問題があります。毎月のサービス利用で、合計額が支給限度額内に収まれば問題はありませんが、時には支給限度額を超えてしまうこともあるでしょう。そうなると、途端に支払額がおおよそ10倍になるというのだから、困ったものです。

厚労省の2013年11月の調査によれば、支給限度額を超えたのは、要支援1で約3000人、利用者そのものが多い要介護2で約30,000人、要介護5で約12,000人となっています。全体の割合としてはまださほど多くはないのですが、年々増えていることが確認されており、今後さらなる問題となることが危惧されています。

これでさらに良くないのは、支給限度額を超えたサービスに対しての自費での支払いができないために、在宅での生活を諦めてしまう方がいることです。毎月の支払額によっては、施設に入居せざるをえない場合もあるかもしれません。いずれにせよ、もう少し制度に柔軟性があれば、在宅での生活が可能になるのにということがあるのです。

要介護度1の方の場合

例えば、「要介護度1の方の場合」を見てみましょう。要介護度1の場合は支給限度額が166,920円です。これは166,920円であれば、介護保険が適用され、自己負担が1割で済むということです。ところが、小規模多機能型居宅介護という介護サービスがありますが、1回あたりで5000円〜30,000円程度で、毎月ではおおよそ13000〜16000単位(つまり13万円〜16万円)程度の介護報酬になりますので、これだけでほぼ支給限度額いっぱいになってしまいます。こういった事例は珍しくなく、価格を気にして適切な介護サービスを妨げることになってしまいます。

このように、区分支給限度額の中では、十分な介護サービスを受けることができなかったり、自費での料金が高過ぎるというのは、介護保険における非常に大きな問題であると言えるでしょう。その他にも、支給限度額には下記のような問題があります。

要介護については、下記の記事も参考になります。

要介護度認定の申請

要介護認定を変更するために再申請できるのか?

要介護度の判定基準は、正しい結果として信頼できるのか?

要介護度の高い人にとって特に問題が多い

さらに、支給限度額によって問題となるのは、特に「要介護度の高い利用者」の場合です。要介護度の高い人は、その病状や状況によって、どうしてもサービスが支給限度額内ではおさまらないことがあります。そうなると、それを超えて必要となる介護は、家族がどうにか世話をするのか、もしくは高額とわかりつつも自費によるサービスを選ばなければならなくなります。

参考までに下記に要介護度別の支給限度額と、高額になりやすい介護サービスを掲載いたします。これを見れば、要介護度の高い利用者、またそれ以外の利用者の場合でも、支給限度額内におさめるというのが簡単ではないのがわかっていただけると思います。

■ 要介護度別・支給限度額
  • 要支援1 50,030円
  • 要支援2 104,730円
  • 要介護1 166,920円
  • 要介護2 196,160円
  • 要介護3 269,310円
  • 要介護4 308,060円
  • 要介護5 360,650円
■ 介護サービスの利用料金(例)

・通所介護を利用した場合の1回あたり料金

  • 要介護1 6,950-7,512円
  • 要介護2 8,170-8,831円
  • 要介護3 9,440-10,204円
  • 要介護4 10,710-11,577円
  • 要介護5 11,970-12,939円

特定事業所加算の問題点

また、特定事業所加算による問題もあります。介護保険制度がはじまってから、多くの加算が制度化されてきましたが、加算を得ている事業所の利用料は高額になりやすいという問題があります。優良なホームであるから入居をしたはずなのに、各サービスの料金が高いため、支給限度額の範囲内では必要とするサービスを受けれられないことが現実として起きてしまっています。

特に在宅介護利用者には負荷が多い

また、問題となるのは在宅介護の場合です。施設の場合は、それぞれの利用者に合わせて必要な介護の量が提供されるため、大きな問題とはなりません。しかしながら、在宅の場合には利用者に提供される介護の量は、この支給限度額によって一律に決められてしまうことになります。そのため、在宅では区分支給限度基準額によって十分なサービスを受けられないばかりか、運用もしづらくなっているのが現状です。

 

以上が、支給限度額の問題点の概要です。当サイトでは、こうした介護保険の話題を多数取り扱っています。ぜひ、下記の関連記事も合わせてご覧になってみてください。お読みいただき、ありがとうございました。

お役に立てたら、シェアしていただけると嬉しいです!

コメントを残す

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

サブコンテンツ